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グローバル成長株投資に新たな視点、米中デカップリングの進展で両面作戦を

 「米国と中国のデカップリングが進む中、グローバル投資家は米中“両方の世界”への投資を維持することを意識的に行うことが重要になってくる」――カナダに本拠を置く独立系の投資調査会社であるアルペン・マクロ(ALPINE MACRO)のチーフ・エマージング・マーケッツ兼中国ストラテジストのYan Wang氏は、アフターコロナを見据えた投資戦略に見直しが必要だと注意を促す。その上で、中国国内で新興企業向け市場の育成が急速に進んでいると指摘している。

6月30日に「香港国家安全維持法」(国安法)が中国で成立し、同日深夜に香港で施行され、中国の香港に対する締め付けが一段と厳しいものになった。中国は、「1国2制度」、「港人治港」(香港住民による香港管理)を掲げてきたが、国安法によって香港は中国の治安維持体制に事実上、組み入れられた。米国は、直ちに中国の銀行に対する制裁法案を可決するなど中国への対抗処置を実施。さらに、中国の新疆ウイグル自治区への迫害の問題や南シナ海での権益問題を持ち出して中国政府をけん制している。加えて、ファーウェイなど中国企業に対する米国での規制強化は一段と厳しいものとなり、米国に上場する中国企業を排除しようという動きが強まっている。

これに対し、米国上場企業の中国回帰も始まった。19年11月にNYSE(NY証取)に上場している電子商取引最大手のアリババ(阿里巴巴集団)が香港メインボードに重複上場を実現。今年6月には、NASDAQ上場の大手インターネットサービス会社の網易(ネットイース)と電子商取引2位の京東集団(JD.com)が相次いで香港メインボードへの重複上場を果たしている。

また、中国国内での新興企業向け市場の整備も規制緩和が進んで活発化している。2009年10月に始まった深セン証券取引所の「創業板(ChiNext)」は、その後、アリババをNYSEに横取りされるなど、目玉企業に乏しい苦しい市場運営を強いられてきたが、現在の市場規模は上場銘柄827社、時価総額8兆8309億人民元(約135兆円)に拡大。年内に米国市場と同等に規制緩和したIPO登録制度を導入し、上場審査を大幅に短縮してIPOを促す計画だ。

そして、19年7月にスタートした上海証券取引所の「科創板(STAR Market)」は、赤字企業の上場も認め、現在の上場銘柄数は128社、時価総額2兆4305億人民元(約37兆円)になった。科創板には7月16日に中国の半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が約463億人民元(約7080億円)を調達して新規上場した。数年前であれば、米国への上場も考えられる成長企業を国内にとどめることに成功している。

これら、中国の新興市場は、中国A株として外国人投資家には中国当局の認可を受けた適格機関投資家しか投資ができないという規制がある。また、業種によっては、外国人投資家が投資できない、あるいは、株式の取得を厳しく制限されている業種もある。ただ、中国政府は、新興市場の育成を命題に外国人投資家への市場開放を着実に進めている。アルペン・マクロによると、中国政府が外国資本の受入れを拒絶しているネガティブリストに掲載されている業種は、2015年位は93業種に及んでいたが、徐々に規制から外れる業種が増え、2020年現在は33業種にまで減っている。

現在、国内公募投信に中国株式を主要投資対象とするファンドは46本。うち、ファンド名に「A株」を入れているファンドが9本。その他、「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」や「SBI 中国テクノロジー株ファンド」などA株を中心に投資するファンド、または、30%程度以上は組み入れているファンドを含めると、20ファンドがA株への投資窓口になっている。国内公募ファンドに占める中国株の比率は、依然として小さいというのが現状だ。ただ、アメリカが中国企業の排斥に動くほど、中国企業の実力が高まっていることは事実だ。まもなく、アメリカを抜いて世界最大のGDP(国内総生産)を有する国になることも確実である。株式投資による中長期的な市場成長を捉えていくのであれば、アルペン・マクロのYan Wang氏の助言も意識して資産運用のポートフォリオを検討したい。(図表は中国本土株式市場の概要)