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株価も金価格も揃って史上最高値を更新、未曽有の金融緩和で極めて不安定な相場に

 8月5日のNY市場で金先物は一時2070.3ドルの高値を付けて史上最高値を更新した。かつ、NASDAQ総合指数も一時11000ポイントを上回り3日連続で史上最高値を更新している。本来であれば、共存しないはずのゴールド高と株高が同時に進行しているのは、いうまでもなく、コロナショックによって世界各国が一斉に行った大規模な金融緩和による「カネ余り」がリスク資産を押し上げている効果だ。米FRBも日銀も、どこの中央銀行の要人も「必要ならばあらゆる手段を講じる」という言葉を繰り返しており、現在の「超金融緩和相場」は簡単には終わりそうもない。極めて不安定な相場が続きそうだ。

米FRBのバランスシート(総資産)の推移と株価指数S&P500の推移を重ね合わせると、今年3月にコロナショックで急落した株価をV字回復させたのは、FRBによる強烈な量的緩和があったことは明らかといっていいだろう。3月の市場急落時には、「新型コロナの感染収束は容易ではなく、経済回復には時間がかかるだろう」と予測された通りに、各国の経済状況はコロナ禍の前の水準とは程遠い水準に低迷している。「米景気が新型コロナウイルス以前の水準を回復するのは2021年末と予想」(クラリダFRB副議長)といわれるように、経済が元に戻るには2年ほどの期間が必要といわれている。それでも、株価だけはV字型に戻り、コロナ禍前の水準を概ね回復した。

世界最大のコロナ感染国である米国の新規感染者数は、4月上旬に一旦は頭打ちしたものの、6月半ばから再拡大して感染第二波の様相を呈してきた。ただ、8月に入って感染拡大が鈍化する兆しが見えている。また、4月に急拡大した死亡者数は、7月以降に緩やかに増えているが、4月ほど大きくは増えていない。現在のところ、感染拡大について一定程度はコントロールできていると評価され、株式市場での安心感につながっている。

また、米国では、議会で追加経済対策が議論され、失業保険給付上乗せを週400ドルとする与党共和党と、週600ドルを主張する民主党の間で調整が行われている。これら対策費用は米国債の増発で賄われ、その増発した国債をFRBが引き受けることで金利上昇が抑えられているという構造だ。「できることは何でもやる」というFRBの姿勢が、国債市場の安定にも寄与している。

株高を支えているともいえるFRBのバランスシートは、6月下旬に約7兆1700億ドルに膨らんだ。リーマンショック前の水準は約9000億ドルだった。その後、3度におよぶ量的緩和策によって2014年には約4兆5000億ドルにまで膨らみ、2018年以降に縮小に転じ、2019年8月には約3兆7500億ドルの水準にまで減らしてきていた。その後、米中貿易摩擦の激化による景気への悪影響を抑えようと緩和的な政策に転じ、20年2月時点では4兆2000億円程度に膨らんでいたが、3月以降6月までに爆発的に資産を増やして7兆ドルを超えてしまった。過去に例のない水準であり、今後の政策変更の影響がどの程度のものになるのか、誰も予測ができない。極めて不安定、不透明な状態だ。

リーマンショックを超える失業率の水準やGDPの落ち込みなどといった経済実態をストレートに反映すれば、米国株価がこれほどのスピードで戻ってくることは考えにくい。しかし、株価がV字回復したのは現実だ。その結果、国内の公的年金を運用する世界最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2020年1-3月に17兆7072億円という過去最悪の運用損を計上したが、4-6月には一転して12兆円超という過去最高の運用益を上げたと推測されている。3月の急落時にも、株式などのリスク資産の比率を落とすことなく、そのまま保有し続けたことが、結果的に運用損失を大きくカバーすることができたことになる。

S&P500の3月安値から8月までの上昇率は40%を超える。3月に思い切って投資していれば、わずか5カ月間で資産が40%以上も増えた計算だ。金融緩和で行き場のない資金が株式市場や商品市場に流れ込み、それぞれの価格を嵩上げしていっている。市場に参加していなければ、この恩恵を受けることはできない。今後も、世界各国の中央銀行は金融緩和的な政策を続けざるを得ないとみられており、その結果としてバブルのような株価や商品市場の膨張は簡単には終わらないだろう。市場に参加していなければ、その恩恵を受けることはできない。

長期投資を旨とするGPIFは、たとえ1カ月間で30%ほども株価が下落しようと、投資資金を引き上げて現金化するようなことはない。その結果、2001年以来の20年間で20年3月末の株安時点でも年率換算2.58%の収益率を稼ぎ出してきた。私たち個人投資家も、このGPIFの姿勢に学ぶべきだ。今後も投資を続ければ、予想もできない急落に遭遇することもあるだろうが、大事なことは、そのような安値にあってもあきらめることなく投資を継続することだ。それは、投資先が米国でも日本でも同じことだ。(図版は、米FRBのバランスシートとS&P500の推移)